-心を掴んで離さない歌-
誰しも、聴いた瞬間にそんな想いに駆られる歌があるのではないだろうか。
私にとってのそんな歌はCHAGE&ASKAの 「LOVE SONG」。
初めて聴いたのは高校生の頃だったと思う。
歌詞も好きだけど、サビ前からぐっと盛り上がる部分のメロディーが特に好きで心が躍る。
高校を卒業して社会人になった私は恋をした。
同じ会社に同期として入社した三歳年上の人。
当初は沢山いる同期の中の友人の一人だったが、趣味や感覚が似ていたこともあったのか、とても気が合い、いつしか好きになっていた。
ある時、同期仲間でカラオケに行くことになり、その時彼が選んだ歌が「LOVE SONG」だった。
歌う姿や声が完全に私の心を支配した。
ただの好きな歌が、心を掴んで離さない歌に変わった瞬間だった。
「好きな歌なんだ」と伝えてからは事ある毎に歌ってくれ、好きな気持ちは増す一方だった。
同じ会社に勤めてはいたが、やがて勤務地は離れる事になった。
離れる前に好きな気持ちは伝えたけど、彼の答えはYESでもNOでもなかった。
淡く切ない思い出だ。
その後私にはもっと好きな人ができたし、結婚もした。それでも「LOVE SONG」はずっと私の心を掴んで離さない歌のまま変わる事はなかった。
そんな彼とは今も変わらず友人として付き合いが続いている。
直接会うこともなくかなりの年月が経過していたが、数年前に再会する機会があった。
食事の後、カラオケに行く流れに。
彼が最初に選んだ曲は「LOVE SONG」。
思い出が一気に蘇った。当然動揺したが、平静なフリをして聴いていた。
どんなつもりでその曲を選んだのか。
彼に聞いてみようかと一瞬考えたが、結局聞かなかったのは、実らなかった過去の恋と、その後に長く続いている友人関係があったからなんだと思う。
彼は覚えていたと思う。
私が彼を好きだった事も、私の好きな歌だった事も。
私達二人の間には、愛でも恋でもなく、だからと言ってただの友達でもない、不思議な空気感がある。彼も同じように感じているはずだ。
だから、私を喜ばせたくて歌ったのだろう。とそう受け止めている。
「だから好きになったんだよね~」
なんて思い出しながら、淡く切ない青春時代を懐かしむように、私は今も時々「LOVE SONG」を聴いている。
そんな歌や時間が、ずっと私を支えている。